Japanese
English
特集 リハビリテーション医学の基礎―正常生理と病態生理
Ⅲ.合併症の病態生理
起立性低血圧の発生機序
Mechanism of Orthostatic Hypotension.
緒方 甫
1
Hajime Ogata
1
1九州労災病院リハビリテーション診療科
1Department of Rehabilitation Medicine, Kyushu Rosai Hospital.
キーワード:
起立時血圧調節機構
,
起立性低血圧
Keyword:
起立時血圧調節機構
,
起立性低血圧
pp.1047-1055
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103906
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はじめに
人類は2本足にて起立歩行を行うことにより移動を可能にする動物である.そのため重力に抗するための多くの複雑なる調節機構を有する.
その一つとして,生体は如何なる体位によっても,血圧,循環血量などを維持しようとする調節機構がそなわっているが,この機構に破綻をきたすと,体位変換特に,起立時に,体位性あるいは起立性低血圧(portural or orthostatic hypotension)と呼ばれる症候を呈することがある.これは頭痛,眩暈,立ちくらみなどの循環器症状を起し,高度の場合には失神をきたすこともある.
この起立性低血圧は既知の疾患の経過中に起る症候性起立性低血圧(symptomatic or secondary orthostatic hypotension)と原因が明らかでない原発性起立性低血圧(idiopathic or primary orthostatic hypotension)がある1,2,3).
リハビリテーション医学の領域においても,高度の麻痺を有する者や長期臥床者などにしばしば合併することがある.そのため,早期より計画的に体位変換などを行ったり,起立斜面台(tilting table)などを活用して,起立性低血圧に対する漸進的治療を行うが,高位脊髄損傷患者では陳旧例でも,日常の生活の中で,低血圧発作を起こす例が少なからず存在する4).
この起立性低血圧の発生機序は複雑であり,未だに不明な点も多く,一括して論議するには問題があるとも考えられるが,その発生機序につき,本篇では著者らが行った脊髄損傷例に対する起立負荷検査成績をまじえ概説することにする.
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