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昭和45年に古賀唯夫,原武郎両先生により「図説自助具」が出版された際,非常に新しい印象を受けたが,今回の「自助具―機能障害と道具の世界」では古賀先生の英国留学の成果も十分加味されて素晴らしい内容でインダストリアルデザイナーとしての立場を守りながら,リハビリテーション医学の中に愛情のこもった訴えを持って入って来られている感激を覚えさせられる.自助具はもともと機能障害を持つ人のみならず正常人にとっても便利なはずであり,人間の本能として,より早く,より楽にというベースがあるだけに適切な障害に適切な自助具が与えられればメリットが大きい反面,間違ったものが与えられるとデメリットとなる事もある.その点,この書は自助具の理論として,自助具とは何か,考慮すべき点,処方,デザイン,目的,原理,等がかなりくわしく説明してあり,導入が大変親切である.日常生活動作のフローチャートでは,人間の1日の生活をかなり多面的にとらえているので,従来の自助具関連書とは違ったユニークさを感じさせられる.住宅,移動,整容,着衣,脱衣,食事,炊事,用便,など普通説明されているものの他に,起床,就寝,作業,休息などの項がもうけられているし,興味深い.寸法入りの見取図,展開図が含まれているので実際に作業療法士などはこの図を参考にして簡単なものは製作可能となっている.和式の生活も十分考慮されて,一般に使い易いものを中心に集められているので,従来自助具の決定版とみられて来たローマン博士著の「独立生活のための器具」の日本版ともいえるのではないであろうか.今日の著書では広範囲の日常生活動作がカバーされているし,写真,イラストも豊富で専門家のみならず,一般の方々にも理解が容易な内容であるだけに,リハビリテーション医療関係者及び身体障害を持つ人と接する機会のあるすべての人々に是非御一読戴きたい本である.
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