書評
筋の構造と機能 編集 酒井 敏夫(東京慈恵会医科大学教授) 遠藤 実(東北大学教授) 杉田 秀夫(東京大学助教授)
富田 忠雄
1
1福岡大学
pp.954
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103894
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600頁以上を批判的な目で読み通した感じからすれば,“筋の構造と機能”は非常に立派な内容の本である.最初に医学書院から書評についての依頼があった時,普通の程度のものだろうと思って,酷評になっても良ければと引き受けたが,著者のリストを見たとき,これはしまったと感じた.何しろ,それぞれの分野での大家によって書かれているので,批判的なことは書き難いような気がしたからである.しかし,読み進むにつれて,私の最初の予想が間違っていたことが分かってきた.
筋肉についての研究は組織学,生理学および生化学の各分野で最近非常な発展を示しているが,それらに対する日本人による寄与は実に大きいものがある.執筆者は正に各方面における研究の指導的役割を果している人達である.筋肉の研究といっても,随分と幅広く,しかも非常に深くなって来つつあるので,各分野にわたって最新の知識をとり入れ,それらを充分理解して行くことは不可能になりつつある.しかし,やはり良い研究を行うには広い範囲にわたって常に目を開いておく必要が感じられる.このためには,どうしても良い解説書が欲しくなるものである.この本はまさしくこの目的にかなったもので,適切な企画が成功したものと認められる.筋肉に関する殆んど全部の分野にわたって歴史的な考察や基本的な事柄についての解説を含み,現在の研究成果がどのような段階であるか,今後の問題点がどのようなものであるか,また臨床的な面にまで及んで明確に述べられている.特に興奮収縮連関機構および収縮機構に関しては非常に高いレベルのものが含まれている.
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