連載 アーキテクチャー×マネジメント・104
東京慈恵会医科大学附属病院
筧 淳夫
1
1工学院大学建築学部建築デザイン学科
pp.748-753
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541212003
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■再整備のスタートから竣工まで
東京慈恵会医科大学附属病院は,日本で最も歴史のある私学の病院として東京都内の西新橋に位置している.長い歴史を経て,一つのキャンパス内に10棟ほどの建物が近接して建てられており,老朽化が著しい建物から比較的新しい建物までが混在した状態となっていた.こうした状況の中で,2000年に,主として病棟部門となる中央棟を竣工させており,主要な病棟部門の再整備はこの段階で終わらせている.そして次なる課題はかなり老朽化が進んでいた外来棟の整備となったそうである.系列の病院の施設整備を先行させたために,実際に外来棟の再整備計画がスタートしたのは2012年からとなった.西新橋再整備準備室が2012年に構想をスタートさせており,8年間の歳月をかけて2020年に竣工となった.
2012年にスタートを切るきっかけとなったのは,再整備の開始が遅くなって旧外来棟の老朽化がより厳しくなったことに加えて,耐震上の課題,そして新たに水害対策も課題となっていたことである.また,そもそも外来患者数は2,800〜3,300人/日であり,旧外来棟では患者のニーズに応えることができなくなっていたので,患者サービスを向上させる必要もあった.こうしてようやく外来棟が完成することとなったが,竣工した2020年1月はまさにCOVID-19によるパンデミックが世界中の医療に多大な影響を与え始めた時期であり,この外来棟もさまざまな困難を抱えての船出となった.なお,現在の新しい外来棟においてはCOVID-19によるパンデミック以前の患者数に戻ってきているとのことである.
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