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今月の特集は肩に関する運動学,解剖学,そしてリハビリテーションである.肩の疾患は股や膝に比較してそれほど多いものではない.しかし手の機能を有効にするために肩の機能は無視することは出来ない.機能解剖と運動学については長年筋電図学とcinematic studyを同期させた研究を続けている佐野氏らによって小気味よく解説された.リハビリテーション医療にたずさわるものとして寺山氏の論文は実際的であり,説明も平易であり,理解し易い.最近患者は整形外科的手術を受けた後にquietなADLの遂行を望むのみならず,よりactiveなADLの目標へと希望が強くなっている.これは編集子が先日国際リウマチ学会出席のついでに米国諸所で見聞した傾向であった.従って高沢氏のスポーツ選手の肩に関する論述は当を得ているように思われたのである.整形外科的手術後の運動療法については遠藤氏が述べ,近年急増している片麻痺の肩については福井氏がその治療法について説明を加えた.講座欄では竹広氏らの生体動作解析システムの設計と運用についての説明が始まった.十分な研究費と研究スタッフを駆使しての長年の研究の成果だけに読みごたえがあろう.解説が易しく初心者にも入門し易い講義であることを期待している.上田氏らの乳幼児発達検査の標準化に関する研究(2)は本邦でのこのような試みが創始的であり,実用性の高いものである.Mennesota大学のKottke氏の講演は編集子も聴講したが,講義内容も理解し易くその当時に上田敏氏の名通訳で(医学的なことを含めた)充実している印象を受けたが,それが論文となってみるとまた新鮮味があり,患者の学習指導上諸兄姉の参考になることは疑いないと感じられた.特集自体も雑誌編集を始めてから種が尽きるのではないかと皆感じていたこともあったが,事実は多数のテーマがすでに順番待ちとなっている.また独創的な学術論文の投稿原稿も増加しつつあり,これは特に雑誌の価値を高めることになるので大いに歓迎したいと思っている.
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