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編集後記
大井 淑雄
pp.836
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106369
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今月の特集で取り上げた電気刺激は,歴史的には非常に古い医療技術といえる.耐えがたい疼痛を,電気を発生する魚で治療したという記録が既にギリシャ時代にあるという.また,かの電気の発明者エジソンは電流をやはり除痛目的で用いたと聞く.しかし,電気生理学という学問が近代的学問の響きを持つように,最近の知見はほとんどが19世紀以降に見出され,また研究されたものである.物理学的方法を治療手段とする理学療法の中で,電気刺激は今でも一定の評価を得て確立されたものであり,さらにその応用は広がりつつある.脊髄手術時のモニタリングで中枢神経の状態を見ようとしたり,骨癒合に応用したりというのがその一例である.
リハビリテーション医学と電気刺激との関わり合いは深く,電気治療器(physical modalities)をはじめとして,CT曲線,脱神経刺激,イオントフォレシス,痛みのための電気刺激など,多くを数えることができるのは千野直一氏の序文にあるとおりである.高倉氏の論文では現在盛んに行われているTENSとその流れを,ゲートコントロール説を絡めて説明されている.編集子も電気鍼などの使用経験があるが,その効用もなかなかのものである.筋力強化に対する電気刺激は疑問視されていた時代もあったが,原田氏らはより客観的判定法でその効果を示している.全く別の分野の論文で,筋のミトコンドリアの著明な増加などいろいろの報告があることを考え合わせると,今後大いに期待できそうな領域であるといえよう.
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