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編集後記
大井 淑雄
pp.605
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102950
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今回の本誌はリハビリテーションの分野でこの10年間にどのようなことがあったかという問題をとり上げた特集である.水野祥太郎先生をはじめ土屋,五味,柴田,大塚,遠藤,原田,本田,青木,角田,荻島そして土屋氏と各界の専門家が10年間このリハビリテーションという本邦では比較的地味な,しかし必須の分野に,情熱を傾けて来られた苦心のあとがしのばれる,尊い論説集である.水野先生が市ケ谷河田町の辺りを歩いて傷痍軍人職業補導所へ行かれていた頃をこの文面から察する限り現在の女子医大界わいは非常に変った.義肢の製作技術の進歩に生体力学などの学問的解説が加ってこれ一つをみても大変進歩したかに見える.しかしながら障害のある人々を救い,より速やかに社会復帰をさせることを願って,彼等のために働いて来た幾多の誠意ある人々の哲学とか心とかいうものはまったく変る筈がないということをあらためて深く感じた.横文字が導入され翻訳されあるいは本邦での消化作用が不完全で昨今のリハビリテーション医学そのものも多少混乱しているのではないかという不安はこれら諸氏の文章を読んで杷憂に過ぎないことがわかった.
独自の健全な方向へ本邦のリハビリテーションは動きつつあることは明らかである.とはいっても荻島氏の強調されているごとく先進国のリハビリテーションの動向もまた一段と高い目的へ向って進んでいる.制度とか総括とかいうことは欧米民族の持つ独特の長所かもしれない.良いことは偏見を捨てて良いこととして素直に導入し学ぶべきである.そして一方高木先生の思想は今日の社会でも正しく,より拡大されて理解されるべきである.
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