- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号の特集では,痙縮(spasticity)と固縮(rigidity)を採りあげた.リハビリテーション医学において最もしばしば問題になり,かつ治療の実際面においてこれほど悩まされるものはあまりないであろう.この点に関して我々は未だ十分納得の出来る良い治療法を持たないのである.それらの発生の機序も生理学的にかなり解明されているとはいえ,臨床医学の治療上に応用されるにしてはあまりにも複雑なのである.
とはいっても,我々が最少限この位は知っていることが望ましいという考えから本間三郎氏をはじめとする何人かの方々に執筆を依頼した.本間氏の痙縮と固縮への入門,慨念の説明から現在までの伸張反射などに関する最新の知見,明石氏らの痙性麻痺の評価法に関する独特の解析方法,痙縮に対する金原氏のフェノール・ブロック,薬物療法としての安藤氏の論文などすべて読みごたえのあるものであると信ずる.編集了は外科医であるが痙縮に対する薬物療法については興味を持っており,その有効性のより優れた薬物の出現を期待している.パーキンソンニズムを中心にした固縮に対する薬物療法は宇尾野氏により,主としてl-DOPAが述べられた.一方電動義手セミナーに関する飯田氏,NWU式ソケットの使用経験を述べた森田氏ら,など本邦の義肢学の水準も大いに高くなったものであると感じられた.約10年前のこれらに関する講義から考えて大変な違いである.鳥巣氏らの寒冷マッサージについての論文は疼痛除去の手段としての効用を論じたものであるが,本邦ではどうもマッサージという言葉にいかにも異様な響きがあり,学院出のPTやOTがろくろく出来ないことが多いことを考えると一読に値するものである.外国ではよく知られているようにマッサージは重要な理学療法の一つであり,日常の治療に欠くことが出来ないものである.遠藤千恵子氏の巻頭言は病院やリハビリテーションセンターにおける看護婦の将来進むべき道を示しておりまったく同感で,手近なところで編集子の勤務している大学病院の看護婦諸姉に是非読んでもらいたいものである.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.