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Ⅰ.手の皮膚
手掌の皮膚は厚く,毛包や脂腺がなく,手掌腱膜とも密に連結されているので可動性が少なく,手で物を強く握る場合でもしっかりと把持することができる.指先の皮膚には知覚をつかさどる多くの神経終末が認められる.痛覚や温冷覚をつかさどるfree nerve endingは主として真皮内に存在するが,一部は表皮内にも入り込んでいる.表皮に近い浅層の真皮内にはMeissner corpscheやMerkel discが数多く見られる.これらの神経終末は触覚に関与し,皮膚が物に接している間はたえずその刺激を中枢へ伝達しつづけるので指先で物を持っていることを認知する.これに反し,皮下にあるPacinian corpuscleは皮膚が物に触れた瞬間あるいは物が皮膚から離れた瞬間のみの刺激を敏速に感じて中枢へ伝えるから,筆で指先をなでた時とか指先をすべらせながら布地のこまかさをみる時にはこの神経終末が大きな役目を果している2,5)(図1).
手掌内には重要な組織が数多く存在するが表面からの視診や触診により深部組織の相互関係をかなり正確に推測することができる.たとえば指屈筋腱が横手根靱帯,虫様筋,腱鞘などとどのような相互関係にあるかを表面から推測することができる.したがって指屈筋腱がどの部位で切断されるとどのような治療法が必要であり,いかなる結果が期待できるかを予想することができる.最近ではこのような解剖学的立場から見た指屈筋腱断裂治療の難易度を考慮して手掌や指をいくつかのzoneに分けている.2本の指屈筋腱が狭い線維性腱鞘内を走るため断裂した指屈筋腱治療が最も難かしくno man's landと呼ばれた部位はzone 2に一致する.また手根管に対応する部分はzone 6と呼ばれる7,14)(図2).
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