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いとぐち
ヒトの起立,歩行は他の動物と異なり二足で行われるところに大きな意義があり,知能の発達,文化の発展へと進化した.
しかし,二足での姿勢は他の動物に比較して重心位置は高く不安定であり,これに伴う躯幹,四肢の異常は,その起立,歩行に障害をもたらすことが多い.これらの障害はヒトにとって大きな負担となり,その改善,治療を希望することはむしろヒトの本能的な願望の一つである.
Rehabilitationの分野でも,起立,歩行は大きな課題の一つであり,治療担当者が常に努力を傾注している問題である.ADLの自立が第1のゴールであるとすれば,起立,歩行はその目的を遂行するためには必須不可欠の条件の一つともなってくる.車椅子をはじめ,その他の歩行補助具の考案が進んできている現在でも起立は必要であり,歩行は障害を有する全ての人の望むところであろう.義肢,装具の発達もこのことを意味している.起立,歩行の問題はこれらのことを踏まえて,その研究がすすめられ,発展してきている.
歩行の研究はArthor Steindlerによれば,Borelli(1608~1679)が歩行研究のpath-finderであるという(De Motu Anima1ium,1682),次いでWeber兄弟(Wilhelm and Edward Weber)の業績が画期的で(Dle Mechanik der Gehwerkzeuge,1836)あり,歩行研究のobservational periodをなしたという.その後,写真やkymographが導入され(Marey,La machine animale,Paris,1873)(Muybridge,1882),歩行の研究は計数的検討の時代に入った.とくにBraune and Fisher(Der Gang des Menschen,1895)の業績は偉大とされ,多くの研究者により引用されている.その後,筋活動の研究(R. Scherb,1952),electrical contact apparatus(Schwarz,1936),force plate(Elftman,1938)などによるkineticな研究に進み,筋電計の発達とともに次第に優れた業績が報告されるようになってきた.
一方,重心に関する研究はBorelli(1682),Fischer(1895),Reynolds(1908)などをはじめとして検討がなされてきているが,臨床的に身体動揺を問題として積極的な研究に入ったのは近年に至ってのことで,主として平衡器障害関係の研究者により発展してきた.Baron(1964),Murray(1967),Eklund(1970),菅野(1970)などによる身体動揺測定器の考案がなされ,臨床的検討もなされつつあり,現在ではかなりの研究報告がみられるようになってきている.
平沢(1960)はReynolds法による一次元的重心位置をpedoscopeを利用して足脈との関係を研究し,正常成人では踵後部より平均47%のところに重心位置があることを報告した.
われわれはpedoscopeを使用して脳性麻痺の足蹠形態と重心位置の検討を行い報告した(1969).さらにgravicorder(stasiofax,kinesiofax)を使用して,正常学童についての足蹠形態と重心位置についての報告を行い(1971),以後重心図の臨床応用についての研究をつづけ,主としてリハビリテーション医学会を中心に報告してきた.
今回は従来行ってきた臨床研究の概要について報告する.
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