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緒言
先天性心疾患児(以下CHD児と略す)に本格的な医療の手がさしのべられたのは,昭和30年代からである.それまでは姑息的な対症療法によってわずかに生命を長らえるのに汲々としてきたCHD児は,抗生物質の発見,各種検査法の開発,麻酔の進歩などにより,外科的な根治手術の対象として考えられるようになり,学校教育の場に参加できるようになってきた.また,現代における教育権,基本的人権思想は,たとえ現状では手術不能のCHD児に対しても,学校教育の場を求める方向にあり,各種各段階のCHD児が就学してきている.
また近年普及した学童心臓検診により,在校生の中にもCHD児が発見されるなど,学校における心臓病児の処遇について教師側の関心もたかまってきている.
すなわち,このような子どもを担任することにより,人間が生きるとは何か,教育とは何かという原点に立ちもどった教師側の姿勢が問われるわけであり,また方法論的にも,身体症状の観察法,運動負荷の程度,心理的・社会的要因に対する配慮,これらのための他職種との連携など,従来の一般教育ではあまり考えなくてもよかった事柄についての知識技能が要求されてきたのである.また,現代の教育界のかかえている教科中心・進学率万能の風潮,行政の末端としての画一的集団公教育の管理体制の中で現場のかかえている悩みは大きい.
これら歴史の浅さ,教育理念の問い直し,方法論の未確立,社会体制の不備などのため,現在CHD児の教育について確立,確定したものがあるわけではない.現状はただ子どもたちと共に病み,共に苦しみ,共に生きながら,一緒に何かを模索している毎日といってもよいだろう.以下その模索の一端を紹介し,諸先生方のご教示,ご鞭撻をいただければと考えている.
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