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今月の特集はADLである.いまさら日常生活動作の議論をして何か新しいことがあるのかと読者諸兄姉はお感じになったかもしれない.しかし,ADLの複雑さと理解度のいろいろな相違を,またあらためて知らされたことが分かるであろう.障害の医学におけるADLの評価手段の非科学性が安藤・大川氏によってまず論じられた.片麻痺患者を例にとって寺山久美子氏は病院内,家庭内,施設内そして職場内での自立という点を要領よくまとめられた.職業復帰が困難なこの疾患において身辺処理動作の自立は完了しても生きがいのある仕事には就けないという多くの患者の嘆きを問題として出している.高橋孝文氏は脳性麻痺児の療育という点からADL,ことに上肢機能の習得と学習基礎能力の習得についてpreschool ageのより一層の配慮を訴えられた.一方,兼松英夫氏らの論文でもわかるように,本邦の脊髄損傷患者の就業率が正確な数字で捉えられていないということは福祉国家を自負する本邦としては自慢にならないことである.視覚聴覚障害者にいたってはもっと就業率は低く実態も不明とのことであった.ROMとADLの関係を村田氏が述べたが,評価手段に科学性を持たせるための方法として大切なことであると考えられる.身体のハンディキャップを住居の改良である程度克服することは誰でも知っているが,より実際的な空間利用法の例が陳慧玉氏によって解説された.その他,多くの方々から熱心な御意見をいただき,なるべく真意を伝えるべくアンケートのまとめに記載させていただいた.以上の諸氏の熱意ある論文は,ADLはいかに関心が深く,いかに混乱があるかを物語っているようであった.
その他リハビリテーション診断学は穐山富太郎氏らで10回を数え,手塚直樹氏の医事法制もわれわれの日常診療と避けて通ることの出来ないものである.
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