特集 聴覚障害者のリハビリテーション
聴覚障害者の職業問題
成井 信子
1
1みみより会
pp.738
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103628
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聴覚障害者(以下,聴障者と略す)の職業問題を考えた場合,それはその本人の生き方(障害のとらえ方)に深く関わる問題ではないかと思われます.失聴という体験を通して私自身,「いかに生くべきか」という自己の立場のふまえ方・あり方を考えつづけてきました.しかし聴障者といえど,障害の重軽から失聴時期,教育や環境等によりその形態は多種多様であり,その過程において意識の形成上一人一人異なるものがみられます.従って,社会生活(あるいは職場)の中で聴障者は「こうあるべき」と一概には言えないものですが,私自身の体験から感じたことを述べてみたいと思います.
中失者にとっての職業問題は,まず第1に失聴した時点でこれまで通りの仕事あるいは生活を維持するのが全く困難になり,これまでの仕事の大部分は不適職となるであろうということです.私は現在タイピストとして4年以上のキャリアを経ておりますが,タイプの技術を身につけていなかったなら,今なおふさわしい職業を知らず社会の片隅でもがいていただろうと思われます.ろう学校や他の聴障者の存在に疎い中失者にとって,社会生活を営む上での教育・訓練の場は必要であり,そうした意味で私が国立聴力言語障害センターで受けた職業訓練(タイプ)・読話・手話教育の3つは現在の生活を支える大きな柱となり得ていると思います.
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