特集 聴覚障害者のリハビリテーション
聴覚障害の遺伝と遺伝相談
大倉 興司
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所
pp.718
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103623
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耳鼻科領域の遺伝学的研究は,他の領域のそれに較べてあまり発展していないが,近年は心身障害の発生予防としての遺伝相談の重要性などから,聴覚障害の遺伝に関する研究もある程度進められるようになった.難聴および難聴を伴う遺伝性の症候群は50種以上報告されている.他に異常を伴わない感音性(神経性)難聴の原因を幼児について調べてみると,常染色体性劣性遺伝―75%,表型模写(原因不明)―20%,常染色体性優性遺―3%,伴性劣性遺伝―2%とされている(Stevensorら,1956).
聴覚障害の遺伝を考えるうえで,最も重要であり,また一般的にいって臨床家にあまり深く認識されていないことに遺伝的異質性heterogeneityの問題がある.たとえば,先天牲感音性(神経性)高度難聴(聾)といわれるものは,ふつう常染色体性劣性遺伝をするものが1種類のように考えられているが,医学的(臨床的)生物学的に識別すべきどのような差も発見されないが,常染色体優性遺伝をするものと伴性劣燃遺伝をするもののあることが知られている.これらの鑑別は家系調査による遺伝形式の相違を明らかにすることによってのみ可能である.遺伝相談で,遺伝的危険率の推定を行うのに,遣伝形式を誤ったのでは遺伝相談にはならないのである.
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