臨床家の遺伝学入門・11
臨床医学への応用(3)—遺伝相談(その2)
大倉 興司
1
1医歯大人類遺伝学
pp.1812-1815
発行日 1971年11月10日
Published Date 1971/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203915
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2.経験的危険率の推定
表型模写や遺伝的異質性があり,それを区別できない場合,遺伝的要因の関与は明らかだが,環境要因との相互作用のため理論的に危険率の推定できない場合,いわゆる多因子性疾患といわれ,いくつもの遺伝子が関与しているような場合などは理論的危険率が推定できない.そこで,数多くの家系資料を求め,それらから条件に従って危険率を経験的に求める以外に方法がないことになる.現在のところ,これ以外に方法がないが,遺伝学の立場からいえば,これは医学と遺伝学が十分な知識をもっておらず,分析の技術をもたないから便宜上使うものであって,いくら膨大な資料を集め,見かけはりっぱな値を求めても,本来は無学を意味するものであって,自慢はできないのである.やはり理論的に推定することができるのがもっとも望ましいのである.
経験的危険率は,親子,同胞,あるいはさらに遠い血族をも調べて求めるわけであるから,非常に多くの家系,そしてしかもかなり広範に血族を調べなければならない.このため,あまり多くの異常や疾患について調べられているわけではなく,また日本人についての資料はきわめて乏しい.白人などでえられた資料をそのまま用いることは正しくないし,誤りをおかす場合があるかもしれないが,他に資料がないので紹介する.
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