助産婦事典
遺伝相談
大倉 興司
1
1東京医科歯科大学人類遺伝学研究室
pp.236-239
発行日 1976年4月25日
Published Date 1976/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205023
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予防医学とは個人および集団を疾患から守ることである。疾患の発生,出現を防ごうとする医学的努力である。過去の長い医学の歴史は感染症との戦いであったが,近年ようやくこれらを人類の手で支配することにほぼ成功した。その結果,これまであまり顧みられることのなかった遺伝性,体質性,先天性の異常や疾患に関心が寄せられ,今日この方面の研究はめざましいものがある。
しかし,遺伝性疾患の治療はようやくその緒についたばかりであり,また治療しえたとしても,遺伝的には再びその遺伝子を子供に伝えるということから,遺伝性疾患の予防は遺伝相談によって,特定の個体同士の結婚からいかなる確率,すなわち危険率で問題の疾患が子供に現われるかを推定し,それによって子供をもうけることに当事者が自らなんらかの制限を行うことによってのみ可能なのである。この意味で遺伝相談こそ,今日の予防医学だと言われるのである。
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