臨床家の遺伝学入門・10
臨床医学への応用(2)—遺伝相談(その1)
大倉 興司
1
1医歯大人類遺伝学
pp.1628-1631
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203869
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遣伝相談とは
遺伝相談genetic counselingという言葉はすでにかなり一般的なものとなり,形のうえでもある程度行なわれるようになってきた.しかし,遺伝相談の目的とするところ,遺伝相談の内包する多くの制約,遺伝相談における倫理といったものまでは正しく理解されておらず,時には誤った理解のうえに,特に優生相談と混同されて実際の相談が行なわれている場合も少なくない.また,近年は遺伝相談の効果に対して,反省しなければならないさまざまな問題が指摘されており,その解決のための哲学が求められているのである.
遺伝相談とはいかなるものかという概念は,主としてアメリカの研究者の考えによっており,1つの形をはっきり示したのはS.Reedの著書が最初と考えられる.近年までこの考え方は遺伝相談にたずさわる多くの者に一貫して受けつがれてきた.すなわち,遺伝学的に考慮すべき問題を有する当事者に,その時までにわかっている科学的事実にもとづいて,問題の本質を十分なっとくのゆくまで説明し,結婚や子供をもうけることに関する最終的結論,別の言葉でいえばそれらの可否は当事者の判断にまかせる,とするものである.そして,カウンセラーは医学および遺伝学,ことに人類遺伝学の知識をもつことは当然だが,それ以上に,問題についての科学的事実を求め,当事者に応じて十分理解できるように説明する努力をなしうるような,人間としての愛情のある人であるべきだとしている.
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