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片麻痺患者の診断的評価の手順―マトリックス・グレープについて
片麻痺に限らずリハビリテーションの診療一般について,医師が行う診断的行為は従来の狭い意味の診断(質的認識,定性的判断)だけに限らず,かなりの程度に評価(量的認識,定量的判断)をも含むものであり,いわば診断的評価(diagnostic evaluation)とでも呼ぶべきものであることは今更いうまでもないが,片麻痺の場合には特にそれが強調される必要がある.
なぜならば,たとえば脊髄損傷の場合には機能レベルの決定は旧来の診断学の立場からしても部位診断として当然なされるべきことであり,しかも完全麻痺であれば対麻痺または四肢麻痺の機能レベル決定はほとんどそのまま将来の日常生活動作(ADL)上の自立度の予測(能力上の予後)につながるが,脳卒中の場合には通常の神経学的診断で要求されるのは病型(出血,血栓,塞栓など)と病変部位(皮質,皮質下,内包,脳幹部など)の決定がほとんどであり,麻痺の程度についてはせいぜい軽度,中等度,重度といった印象的な全体判断(global judgement)と痙性,固縮の有無の記載などにとどまることがふつうであったからである.病型,部位の推定はもちろん重要であるが,リハビリテーションの見地からはそれだけにとどまるのでは不十分で,運動障害についても,感覚面の障害についても,より詳しい量的な把握がなされるのでなければ機能的予後の判断には役立たない.また通常の神経学的診断では,歩行,その他のADLのチェックが抜けてしまうことが多く,その点でもリハビリテーションにあたって重要な患者の全体像の把握という点で欠けたものとなりやすい.
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