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脊髄の電気生理学的研究には,大きく2つの時期があったと考えられる,第1は反射弓からの活動電位導出によるreflex activityの分析の時期,第2は1952年以降Brock,Coombs,Eccles等に始まる細胞内電極法を用いて脊髄のmotoneuronやinterneuronへのimpulseを直接研究観察する時期である.この間,Gasser10,14),Graham10)(1933)は脊髄背面電位を導出し,Barron,Matthews1)(1938)はその遅い成分が求心線維のnegative after potentialであること,Bernhard2,3)(1953)は,N波がpostsynaptic neuronの存在を示唆すること,Eccles8,9),Magni,Willi9)(1962)は,P波がGroup Iのprimary afferent depolarizationの脊髄内へのひろがりを示すものであること,等を発表し,多くの知見5)が集積されてきた.そして,近年,医用電算機の著しい発達に伴って,脊髄病変の診断,予後判定などに対して,この脊髄誘発電位を臨床的に応用しようとする試みが可能になって来た.しかしまだ現状では一般に実施されるまでに至っていない.ここでは最近の脊髄誘発電位の臨床研究の動向を紹介する.
実験的脊髄損傷の研究では,Gelfan11)(1955),Tarlov11,21)(1955,1957)は犬を用いて脊髄をballoonで圧迫し,あるいは虚血状態をつくり,このときの脊髄電位の変化を検討した.急性脊損における麻痺の原因が,虚血によるためのものか,圧迫によるためのものかを追求することが,その目的であった.導出した波形はimpulse volleyが脊髄に到達したときのふれIP,一次求心線維の反応A,介在ニューロンの反応N,それにつづくPからなっている.AnoxiaではP波の変化がCompressionではA波の変化が特徴的であり,48時間以上圧迫での進行性麻痺は波形の変化から虚血性変化によるものと考えられること,rccovery capacityは虚血より圧迫によるものの方が大きいこと,を結論した.Deecke7)ら(1973)は猿を使って胸髄硬膜外腔より陽性波に始まる三相性波形を導出した.これは伝導速度測定から,Group Ⅱ由来のafferent volleyであると推定した.この場合には,Gasserらのいうsegmental potential,TarlovのいうN,P波は導出されなかった.彼等は損傷を受けた脊髄髄節では,大きなmonophasicな陽性波が出現することを認め,これより上位での波形の有無を,完全損傷かどうかの指標とした.400mmHgの圧では100%完全伝導遮断を起こした.
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