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Ⅰ.はじめに
脊髄損傷(以下脊損と略す)の患者には尿失禁を伴うことが非常に多く,看護面から,また,機能訓練,職業訓練,ADL,社会生活の面からも色色と障害になることが多い.受傷後急性期から理想的な尿路管理と膀胱訓練が行なわれた症例では,残尿,感染,失禁のいずれも伴わない,いわば健康人に近い膀胱機能を保持していることもあるが,それはむしろ例外的である.病状経過の中でわれわれが最も危惧するのは尿路感染であるが,残尿の多い膀胱には感染が起こり易いし,一度発生した感染が極めて難治性であるため,残尿量を少なくする(30m~以下)ことが基本的課題となる.
一般的に言うと,脊損者に伴う尿失禁には2つのタイプがある.ひとつは残尿が多い膀胱に伴う失禁であり,他のものは残尿が少ない膀胱に伴う尿失禁である.前者の場合には,TUR(経尿道的膀胱頸部切除術)のような泌尿器科的処置や神経ブロックを行なうことにより,尿失禁そのものが改善することもあり,後者の場合には,適切な膀胱訓練,外尿道括約筋の電気刺激などを施行すると改善が見られることもあるので,尿失禁があるからといって直ちに尿集器その他の自助具を考えるのは妥当とは言えない.要は尿失禁が起る膀胱の状態を正確に把握することが重要なのである.
また,精査の結果,止むを得ないと判断される尿失禁にも色々な程度の差がある.例えば尿意がある程度残されており,数時間の蓄尿にも堪えられるが,尿意を感ずると我慢が出来ず,1~2分の内に排尿が起ってしまうもの,膀胱が充満状態になると,自然に少量ずつ洩れ始めるもの,あるいは一旦失禁が始まると大量に洩れてしまうものなど種々である.
また,世の中には,尿失禁に対する様々の種類の衛生器材,尿集器,自助具が販売されており,どの種のものが適当であるかは.個々の症例に応じて医師や看護婦がアドバイスを与えることが望ましい.
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