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はじめに
ニューマティックブレイス(正しくは,Pneumatic Orthesis)は,商品名をORTAZURと称せられ,1965年フランスのDr. Morelにより開発された“気体圧”下肢装具である.本装具は,高度の気密技術を応用した下肢装具であるが,金属のアップライトを用いず,患者の下肢の前後側に位置する3本(計12本)の空気層(エア・チューブ)を0.5~2.5気圧の圧縮空気(または,炭酸ガス)で膨張させ,下肢に適切な支持を与える構造になっている.この装具はA型(従来のLLBに相当する),B型(骨盤帯付きLLBに相当する)の2種があり,患者の採寸結果によって6サイズが市販されている.装具の着用に当っては,内外側にある調節紐(Adjustment Lacing)によって患者にフィットさせ,その着脱はレリースジッパーによって行うが,上述,調節紐による調節は通常使用前に1回行えば,その後装着に際して(浮腫などの場合を除き)必要はない.
上述の空気またはCO2ガスの注入(インフレーション)には,空気ボンベ,カートリッジ式CO2ボンベ,コンプレサー(充電式)の方法などがあり,これらの方法で下肢の前後側に相当する部分に組み込まれたチューブを2~2.5kg/cm2の気体圧力で膨張させることができる.しかし,小児などを対象とした場合,上述のようなボンベの代りに,簡単なハンドコンプレサーにより看護婦などの手により比較的短時間に(上述カートリッジ式CO2ボンベでは10秒でインフレーションを完了するが,ハンドコンプレサーにて,例えば後述の筋ジストロフィー児を対象とした際,約5分で注入することができる)(図1,2,3).
さて,この装具の装着は,図4のように不燃性のメリヤスなどの下着をつけ,仰臥位で靴をつけ,靴および足部に装具をとりつける.そして膝の部分にクッションが必要な場合には膝クッションの位置をきめるが,3本のジッパー(レッグ,ウエスト,レリースジッパー)を閉じ,フートアップのストラップを靴に取りつけて装着を完了する.ただし,後述のように,本装具を筋ジストロフィー児に装用する際には,通常,認められる尖足位拘縮に対応するため,足関節装具に補高を施したものを工夫した(図5).
以上がニューマティックブレイスの構造,使用法の概略である.本稿に与えられた課題は,この装具を含めて他動的動力装具に関してではあるが,私共はさきに,本誌1巻8号に,私共の工夫せる下肢動力(電動)装具に関し報告したので今回はこれについては省略する.
また,私共は,本装具のもっともの適応と考えられる脊髄損傷のパラプレジアに対する経験には乏しいので,はじめに一応の適応と考えられる筋ジストロフィー児に対する使用経験,その問題点につき述べ,ついで,脊髄損傷に対しての装着につきふれることにする.後者脊損によるパラプレジアに対する装着に関しては,国立身体障害センターの橋倉一裕氏,初山泰弘氏,川井伸夫氏らの発表論文,拝借した資料より引用させていただいた.
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