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脳性麻痺者(以下CP)ば,決して限られた職業的可能性の単一な類型集団とはいえない.現に,大学の教壇に立ったり,飜訳の専門家であったり,事業の経営者である人々も実在する.しかし,また同時に,その大多数は,上肢,言語,移動,発作等の諸障害とともに,職業への動機づけ,職業発達度の低調さ等から,職業リハビリテーションの上では格別に入念な配慮を常に必要とすることも事実である.このような理由から,元来は職業技能の訓練や再訓練を目的とする職業訓練校や更生指導所の対象となるのは,CPのうち極めて限定された人々であり,大多数は職業と福祉の交錯領域と目される「授産施設」に相当の期待が寄せられている.しかし,近年におけるわが国の授産施設の近代化を目ざした生産性志向の傾向は,リハビリテーションや福祉の分野におけるCPの著しい顕在に比較し,結果的にはCPの授産施設の利用率の相対的な抑制を招来しているように思われる.
とりわけ,最重度なCPの大部分は,現行の重度授産施設の対象にもなり難い場合が多く,思い余った親達や関係者の自力による私的な作業ホーム(ワークアクティビティ的なもの)も,若干出現している現状もみられる.重度授産施設の対象者として,より重度なCPの入所を可能にするためには,準福祉工場的な志向から,生産を副次的に考える「ワークアクティビティセンター」的な方向への発想の転換を必須とする.現実には,「療護施設」と併設することにより,前者には生活設備と介助,その他の福祉的側面を,後者には作業場面の,それぞれ,相互補完的利用を付加することが可能であろう.この種の施設は,従って,希望すれば半永久的な在所が可能である,重度者のための生活施設としての意味をも持つため,理想をいえば,生活面でのプライバシーの確保や,可能な人には,結婚生活が伴えば申し分はない.
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