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1.はじめに
第12回日本リハビリテーション医学会総会に引きつづいて,5月30日には日本義肢装具研究会が兵庫県民会館6階ホールで行われ,翌31日に同じ会場で電動義手セミナーが催された.午前9時30分から約1時間,早稲田大学理工学部機械工学科の加藤一郎教授による世界各国における動力義手の現況についての,スライドおよび16ミリシネを用いた総括的講演をもってセミナーの幕が切って落とされ,小憩ののちいよいよ参加者全員待望の,オット・ボック社のオットー・フルジンスキー氏による前腕電動義手製作実技のデモンストレーションに入った.約300名のセミナー参加者の息づまるような熱気のこもった注視の中で,採寸・採型,ソケット製作,組立,試運転に至る,流れるような淀みのないフルジンスキー氏の手さばきの見事さ,これを支えた各種材料と,標準化された部品設計の素晴らしさ,そして組み上がった義手本体の簡素な美しさ,最後にモデル患者が喜ばしげに手先の開閉,回内外動作を行ったとき,期せずして起こった拍手,そして全員が固唾を飲んで見まもってきたフルジンスキー氏の手技が期待通りの成果に達したことに対する参加者側の安堵感と満足感が声となったざわめき,これらの光景がまるで昨日のことのように浮かんでくる.
筆者は光栄にも,フルジンスキー氏の実技デモンストレーションを解説するよう沢村先生から仰せつかり,自分の能力も顧みずお引き受けしたのであったが,今考えてみれば,フルジンスキー氏に一番近いところで,いちばん勉強させていただき,ほんとうに参加者のみなさんに十分な解説をし得たのであろうかと,顧みて慙塊の至りである.
これほど,参加者各位が満ち足りた思いを懐いたセミナーはなかったのではないだろうかと思われ,これを企画された沢村先生をはじめ,関係者の皆さんに心からお礼を申しあげたい.
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