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序
脳卒中などの片麻痒の患手は,たんに指の使用訓練をくり返してもつまみが可能なレベルには達しないことが少なくない.このような手は手関節の機能もまた不良であることが気付かれる.脳損傷の患者における指の機能の再獲得は,手関節に大きな関心を払うことなしには不可能なのかもしれない.
この研究は,以上のような点に端を発している.片麻痺患手において,手関節機能と把握・つまみ系機能との間にどの程度の関連があるかをみること,前者によって後者の予測が可能であるかを知ることが目的であった.また,もしこの2者の関連が強いのなら,つまめるようになるには少なくともどの程度の手関節機能を目標にすべきかを知りたいと考えた.このような問に直接に答えている文献は見あたらなかった.しかし,指と手関節が密接な関係にあることははやくから指摘されている.Duchenne(1866)1),Beevor(1903)2),White(1960)3),McFarland et al.(1962)4),Kaplan(1966)5),Kapandji6)は,指筋と手関節筋間のsynergismについて述べ,1(1970)7),Randonjic et al.(1971)8)は,指の運動時に指関節には付着しない前腕筋に筋活動が見られたと報告している.太田(1958)9),原(1960)10)は,手関節の肢位によって指筋の作用に変化が生ずることを報告した.手関節の肢位によって手指動作の効率が異なることについては,上田ら(1964)11),Kaplan(1965)12),Flatt(1968)13).Boyes(1970)14),Kraft et al(1972)15)の記載がある.
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