視覚に障害のある児童生徒の教育について

Education of the Visually Handicapped.

はじめに

　わが国の義務教育就学率は99.9％，高校進学率はすでに90％を突破している．また，小・中・高校や大学の建設ともなればその地域はいずこも極めて積極的で，住民こぞってこれを応援しようとする風潮が強い．まさに教育国家と称する一断面を象徴しているかに見える．ところが同じ教育でも心身障害児に対するそれはどうであろうか．盲・聾・養護学校や特殊学級あるいは障害児のための施設を作るということになると，首都東京においてすら町ぐるみでこれを阻止しようとするケースが最近にも起こったほどである．今日わが国の特殊教育は質，量ともに相当の水準にまで達してはいるが，こうした不安定な土壌の上にのせられていることを忘れてはならない．真の教育国家というにはあまりにもなげかわしい一面でもある．社会一般の心身障害児に対する理解や認識がない限り，いかに莫大な経費を投じて物的条件を整えようとも，障害児教育の抜本的改革は望めないし，障害者の社会参加も容易ではないのである．

　以上心身障害児教育に共通する背景を直視しながら視覚に障害のある児童生徒の教育（以下視覚障害教育という）について現状と問題点をさぐってみたい．