巻頭言
夢―ダイナミック・ソケット
飯田 卯之吉
1
1国立身体障害センター補装具研究所
pp.633-634
発行日 1974年9月10日
Published Date 1974/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103192
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現用義肢のソケットは剛体の殼であって,この中に切断端の組織をうまく納めて運動と力の伝達を行おうとするもので,ソケット自体はスタチック・ソケットであり,けっしてダイナミック・ソケットではない.切断端の筋組織は,ソケット内部でダイナミックに変形を繰り返しているはずであるが,他の軟組織のおかげでもあろうか,切断端全体としてはソケット内部での変形や移動はほとんどなく,ソケット内壁と切断端表面との間の相対的ずれは認められない.この相対的ずれが起こるようでは,このソケットは異状運動を招くし,また特にサクション・ソケットでは直ぐに切断端からの脱落を起こしてしまう.スタチックなソケットである限り,切断端の経時的寸法変化―やせたり,太ったり―に対応できないし,またサクション・ソケットのように気密構造にすると,発汗処理の問題に真正面からぶつかることになる.
それでは真にダイナミックなソケットはといえば,これは切断端そのものであろう.“最良の義肢は切断端自体である”というzur Verthの言は,まさに永遠の真実を言いあてた言葉である.
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