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仙台から
いくつかの変化
仙台駅に降りると,いくつかある改札口の1つに,身障者も安全に利用できる施設であることを示す「国際シンボルマーク」がはってあることに気がつきます.このシンボルマークは,仙台市内のそのほかの場所でもみることができます.そして,このシンボルマークがはってある場所,すなわち,身障者も安全に利用できる施設の所在地を示す地図=福祉地図がつくられています.この地図をみると,仙台市を中心とした宮城県に大きな変化がおこりつつあることがわかります.すなわち,昭和46年11月に三越デパート仙台支店が全国にさきがけて,4階にあるトイレを車いす使用者も利用できるよう改造したことを皮切りに,他のデパートや映画館もつぎつぎに同様の改造にふみきっています.さらに,県庁と市役所も1階のトイレを改造し,正面玄関に段のある県庁はスロープを設置し,身障者が1階ですべて用がたせるよう各課の体制がととのいました.その後もこの波もんは広がり,県内各地の役所で社会福祉事務所が1階におろされるなど,県,市の施設は県民会館,市民会館はもとよりスポーツセンター,保養所にいたるまで同様の配慮がなされています.
歩道と車道の段差が削りとられてスロープ化された繁華街を,子どもや老人,うば車を押した主婦たちが歩いていきます.まさに身障者のための配慮は,一般の人々にとっても親切な配慮といえましょう.いつのまにやら少しずつかわっていったこの変化は,大多数の一般市民にとってはほとんどその意味さえわかりかねる目だたない変化かもしれません.しかし,普通の人たちと同じような生活や活動を求めながら,町や交通機関の構造上,やむをえず施設や,家庭の中に生活をとざされてきた身障者にとっては,まさに身障者の人権という基盤にたった世紀の幕が切って落されたような意義と役割をもつ変化と考えるのは大げさでしょうか.しかもこの運動は,身障者自身の率直な発言と,実践を中心とした若いボランティアの集まりから始まり,それが各種の市民団体や民間会社へと共感をよび,さらにその共感の輪は公的機関へも広がり,多様な形をとって具体化されていることに大きな特徴があります.
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