- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
街を構成する要素
上田 こんど「総合リハビリテーション」誌で「障害者のための街づくり」という特集をすることになりました.そこで先生のお話をぜひ聞かせていただきたいと思ってうかがったわけです.街づくりという場合に,建築家をはじめ行政の人も,あるいはわれわれ医療関係のものも,つい物理的な環境―物のことばかり考えてしまうわけですね.歩道を削ればいいとか,斜面はこのくらいの角度にすればいいとかいうことにすぐなってしまいます.しかし,街といった場合に,そういう物理的なものだけが街なのかどうか.むしろ物理的なものの中に人間がたくさん住んでいて,その人間たちがつくっているものが街なんだろうと思うんです.そうしますと,街をつくっていくということは,物理的なことも大事ですけれども,その他にも考えなければならない要素がたくさんあるわけです.先生は精神科医であって,リハビリテーションのこともご造詣が深く,またご自身障害を持っていらっしゃるということからきっとこの問題についてお考えになっていらっしゃることがあるに違いないと思って来たわけです.
永井 街の機能からいえば,確かにその中に働いている人間のためですから,物理的なものばかりではなくて,社会的,心理的,という要素が入ってこなければいけないと思います.ただ,残念なことに,街といった言葉のニュアンスとして,どうも外という感じがあります.ほんとうはそうでなくて,外のtransportationその他の問題を含めることはもちろん,家庭内での独立という段階も入れて,場合によってはtransportationのできない人たちのためにコミュニケーションという見地から,外と内とのつながりということまで考える.例えば電話による大学教育などまで考える.それで初めて全体のディスカッションの基盤ができると思うんです.ですから,ただ単に,車道と歩道との段差がなくなるとかいう問題ではなくて,家庭内の人にいたるまで,同じような考え方が浸透するように,すべてをひっくるめて街づくりということを考えなければならないと思います.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.