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編集後記
鹿
pp.1214
発行日 2006年12月10日
Published Date 2006/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102845
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植物社会学は,植生の秩序・法則性を研究する環境学の一分野だそうで,それによると植生は,農耕時代以前の未だ人の手が加えられていない「原植生」,植林や大気汚染等,いろいろ人為的な影響を受けている「現存植生」,それら人為的影響がなくなったと仮定し,土地本来の植生を理論的に抽出した「潜在自然植生」に分類されています.日本の森はシイ,タブ,カシ類などが原植生だったそうですが,木材生産などのためにスギ,ヒノキ,マツなどの現存植生に変わり,それが現在の自然林破壊につながり,崖崩れなど災害の原因となり,花粉症でわれわれを悩ませているというわけです.また木材をつくるためには管理しやすいように同じ種類の木を等間隔で植えるのが合理的ですが,長い年月を経てみればこれも自然破壊の原因で,本来,森はいろいろの植物が混じって多様であることが大事だと言います.ネット社会が生活の隅々まで浸透し,人工物のなかで画一的生活を強いられ身動きがとれなくなっているような時代には,「潜在自然人生」を考えてみるのもいいかも知れません.
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