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編集後記
鹿
pp.404
発行日 2006年4月10日
Published Date 2006/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102821
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少し前までは,世間にも,身近な周囲にも変わったひとがたくさんいて,いろいろな自己主張があり,もっと楽しかったような気がする.近頃は多様な情報が溢れているにもかかわらず,一見個性的にみえるが個を感じさせないひとが多いなと思っていたところ,「象徴的貧困」という言葉が目にとまった(「朝日新聞」06年2月14日).フランスの哲学者ベルナール・スティグレールというひとが使いはじめた概念で,過剰な情報やイメージを消化しきれない人間が,貧しい判断力や想像力しか手にできなくなった状態を指すのだそうだ.情報社会のなかで増え続ける大量の情報に追いつくために,情報の選択や判断を自分以外の誰かの手にゆだねざるを得なくなり,結局は選択された情報,自分に快を与える情報にしか反応しなくなり,手にした情報は画一化されたものでしかなくなるという.昔の絵画でも音楽でも,情報は少ない時代なのに想像力の豊かさを思わせるものはたくさんある.桜の開花も間近なこの季節,来年の年間企画会議の時期でもあるのですが,「象徴的貧困」は避けたい.
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