巻頭言
裾野を広げる共同体としてのリハビリテーションへ
岡田 靖
1
1国立病院機構九州医療センター脳血管センター・臨床研究センター
pp.1163
発行日 2012年9月10日
Published Date 2012/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102650
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大震災,大津波,原発事故を体験し,超高齢化が進むわが国の社会において,社会保障制度の改革が求められ,人々の暮らし方,医療政策,メディアにも変化の兆しがみられます.また助け合いや絆という言葉が日常的に聞かれる一方で,家庭内の犯罪や孤独死などのニュースも絶えません.コミュニティ(共同体)は,その共同体のメンバーの誰かが病気になったり,障害を受けた場合に,即座に共同体から分断するような関係であってはなりません.共同体の本質とは,その仲間が適格条件を欠いていても暖かく迎え,その人らしく過ごせるような支援の手を差し伸べ,そして仲間の回復を気長に待つセーフティネットとしての環境を意味していると思います.
その意味で地域リハビリテーションの定義,すなわち「障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところで,そこに住む人々とともに,一生安全に,いきいきとした生活が送れるよう,医療や保健,福祉および生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う」は視野の広い,愛に満ちた提言であり,リハビリテーションを主軸においた共同体の概念と言えます.また障害のある方に限定せず,高齢者およびその家族が入っていることに先見性を感じます.
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