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臨時増刊号特集 精神医学における日本的特性
B.治療状況の日本的特性
治療共同体の日本的特性
Characteristics of the Therapeutic Community in Japan
鈴木 純一
1
1東京都精神医学総合研究所社会精神医学部門
1Division of Social Psychiatry, Psychiatric Research Institute of Tokyo
pp.1380-1385
発行日 1975年12月25日
Published Date 1975/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202417
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I.はじめに
近年わが国においても,治療共同体(therapeutic community)という言葉があちこちで語られ,学会でもとりあげられるようになってきている。しかしながら,私の知る範囲では,治療共同体実践の成果の報告は数少なく,十分な検討がなされているとはいえない現状である。またこれまでに発表された成果についても,治療共同体の定義ないしはイメージといったものにかなりの異同がみられ,混乱があるように思われる。これはわが国に限った現象ではなく,欧米でも種々の混乱を経てそうした問題点が整理されつつある。それは,治療共同体という概念の有するあいまいさの故というよりも,この概念が何よりもprocess(過程)を重んずるために実践者によって特色が分かれるのは,むしろ当然というべきかもしれない。
したがって日本における治療共同体の特性を論ずる場合も,個々の治療共同体の特徴を無視するわけにはいかず,その中から「日本的」といえる属性を抽出するのは容易ではない。それ故,筆者はここで,治療共同体という概念自体の有する特性を明らかにするようつとめ,その上で,筆者が個人的に体験した日本での治療共同体のあり方についての観察を述べようと思う。「個人的」と断ったのは,先にも述べたように,実践者自身の有する特性の影響が,治療共同体という機構形成の重要な因子となるからである。このようないわば個人的な観察が,数多く積み重ねられることにより初めて,日本人による治療共同体の特性が明らかになろうと考えられる。
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