扉
広い裾野
竹内 一夫
1
1杏林大学脳神経外科
pp.89-90
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200263
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わが国において脳神経外科が独立した診療科目に公認されてからはや10年になる,その後認定医制度も発足し,今では卒後すぐに脳神経外科医としての訓練がはじまった人々も少なくない.昭和23年に日本脳神経外科学会が発足したころと比らべるとまさに隔世の感がある.当時は独立した脳神経外科の教室や診療科は皆無で,もちろんフルタイムの専門医も見当らなかった.その後多くは外科医の中から脳神経外科を専攻する入々が輩出し,今日では独立した講座も診療科も決して珍しくない.
今日のように学問が細分化し,専門化すると,昔は一般の外科医がすべて受け持っていた頭蓋腔・胸腔・腹腔内の手術も,それぞれ専門家達の手によって行われるようになった.もちろん質においてははるかに高度の診療が行われていることも事実である.したがって医科大学の新卒業生が脳神経外科を志す場合,修練中に脳神経外科以外の領域の知識を吸収する機会に恵まれなくなる傾向が出てきた.また若い人達もできるだけ早く専門的な知識や技術を身につけるべく急ぐあまり,直接関係のないような領域にあまり興味をもたず,ただひたすら専門領城にのみ注目し,先を急いでいる傾向がある,そしてすでに少し前までは広い外科学の中ではきわめて狭い専門的な部門とされていた脳神経外科の中で,さらに限られた特殊なテーマのみに興味をもっている入も見受けられる.
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