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情報技術の大きな貢献
今日の社会では多種多様な情報がさまざまな方法で流通し,交換されている.それゆえこの社会における生活では,情報の取得・記録・処理・発信など,情報へのアクセスが重要な位置を占める.しかしながら,情報の多くが視覚的な形態であることから,視覚障害者はこれを行うのが容易でない.その困難や不便は日常のさまざまな場面に及び,結果として社会参加の大きな妨げとなる.近年,この問題の軽減に情報技術(Information Technology;IT)が活用され,目覚しい成果を上げるとともに,視覚障害者のコミュニケーションについても大きな改善をみた.
当然,情報アクセスやコミュニケーションに関する困難や不便は,社会の情報化が進む以前からの問題であった.ITが登場して活用されるようになる前は,「文字処理問題」と言われていたこの問題に,視覚障害者はもっぱら他人の助力を頼んで対処するしかなかった.点訳,墨訳,読み上げ,口述筆記,代筆,拡大写本といった支援への完全な依存である.ITは,そうした状況をいくつかの側面から改善した.一つはすべて人手によって行われていた墨字(眼で読む普通の文字)を点字や音声,あるいは視認しやすい形状に変換するプロセスをある程度自動化したことである.他方,視覚を使わずに墨字文書を作成する方法も確立された.また,それらとも関連する成果として,点字や音声,ロービジョン向け視覚情報を円滑に伝えるためのヒューマン・インタフェイス機器やソフトウェアが実現したことも重要である.さらに,社会全体で情報のデジタル化が進み,電子データの流通が一般的になったことも,ITが視覚障害者にもたらした恩恵と言える.
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