Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「かすかな光へ」―戦後教育の到達点としての知的障害者アート
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.409
発行日 2012年4月10日
Published Date 2012/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102454
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太田堯(おおた たかし).93歳.東京大学名誉教授.日本教育学会会長,都留文科大学学長などを歴任.時代や社会と格闘してきた教育学者として著名である.ドキュメンタリー「かすかな光へ」(監督/森康行)は,太田の軌跡を辿ることで戦後教育史を語り,いま,ここにいる太田の言葉と活動に光を当てることで進むべき未来を語る.
本作には,時折,暗い海のショットが挿入される.それは,戦争中,南方戦線に向かう輸送船が魚雷によって撃沈され,36時間も漂流することになった太田の原風景として解釈できる.漂流の先に待っていたのは,「無」から始まるジャングルでの生活.ここに太田の教育学研究の原点がある.漁民・農民兵士の優れた働きぶりを目の当たりにしつつも,人々の魂を圧殺する戦争という現実に対して,教育は何ができるのか? という問いを自らに発したのだ.
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