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はじめに
ポリオ感染症は「今から約60年前に多数の運動麻痺患者を生じさせたが,その後のワクチン接種によって本邦ではほぼ撲滅された疾患」と認識されており,医学教育でも,「過去の病」,「ワクチン関連疾患」として触れられるに過ぎない.
一方,実際の臨床では,1980年ごろからポリオ罹患後15~50年を経てポリオ経験者に生じる新たな筋力低下,筋萎縮,疲労感増大が報告されるようになり,ポストポリオ症候群(post-polio syndrome;PPS)として一定の注目を浴びてきた.
PPS発症の原因は現時点でも確定されていないが,誘因として,残存した運動単位(前角細胞とそれが支配する筋線維の一組)に対する長期間の過用が重要である点については諸家の意見がほぼ一致している1-3).
PPSはいわゆる「患肢」だけではなく,それまで「健常肢」と思われていた肢にも生じることがある(幼少期のポリオ感染によって「健常肢」側の前角細胞も減少していたと考えられている).
PPS発症・進行のリスクについて,定期的に評価を行い,その程度や変化への対応が可能な医療機関は多くない.その理由は,先述のごとく医療関係者にPPSの理解が浸透していないことと,対応には相当の時間と技術が必要であることによる.
このような現状では,まずポリオ経験者に対応可能な地域の中心となる医療機関が必要である.現在,国内数か所において,患者会との共同のポリオ定期検診(以下,検診)が行われているものの,全国を網羅できていない.
検診を中心とした「包括的PPS対策プロジェクト」を実施するメリットは以下の通りである.
・定期的に検診を受けることで,ポリオ経験者が自身の身体機能の現況および変化について把握できる.
・PPS発症・進行のリスクを早期発見,介入する契機として活用できる(外来へ繋げることができる).
・相当の時間と技術が必要であるPPS対応をより多くのポリオ経験者へ集約して実施できる.
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