巻頭言
片麻痺でも100%の可能性
笠井 史人
1
1昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
pp.113
発行日 2012年2月10日
Published Date 2012/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102359
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先日私の外来で,ある脳卒中患者さんが「私の右半身は麻痺をしているので,人生が50%に狭められた」と冗談交じりでおっしゃいました.なるほど,それくらい不自由なのだとは伝わりましたが,果たして本当に50%になってしまったのでしょうか?
日本が誇る世界的なピアニスト,舘野泉さんは2002年にコンサートの最中,脳出血で倒れました.ピアニストの生命ともいうべき右手の自由を失ったことは,彼にとって死刑宣告にも等しいものであり,一時は引退を考えたそうです.失意の日々を送っていた彼に再起への手がかりをもたらしたのは,バイオリニストの息子さんから贈られた「左手のための曲」の楽譜でした.単なるトレーニング曲と高をくくっていた彼は,その楽譜を弾いて生き返るような感覚を経験します.そこには両手で弾くピアノとは別世界が広がっていたのです.「左手だけでピアノを弾くことは,“2マイナス1の音楽”ということではありません.両手で弾く音楽同様,そこには充実した音楽の世界がありました」と述べています.
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