特集 脳卒中のリハビリテーション
片麻痺における排尿障害
三島 博信
1
1洞爺協会病院リハビリテーション部
pp.450
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103564
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脊髄損傷の場合に尿路管理の重要なことは周知のとおりですが,脳卒中後遺症でも排尿障害は重要なリハビリテーション阻害因子の1つであることを忘れてはならないと思います,しかしながら,この点についての関心は意外とおろそかにされているのではないでしょうか.その理由としては,脳卒中患者には高齢者が多いので,老人性痴呆による中枢抑制機能の低下や前立腺肥大・尿道狭窄などの器質的な尿路通過障害のあるものもあり,また,高血圧・動脈硬化・心臓病・糖尿病・梅毒などの合併症のあるものも少なくないので,頻尿ぐらいあっても当然だというような先入観があると思われます.さらに,排尿中枢は左右両側の大脳皮質にあるのだから,脳卒中のように片側の大脳のみに病巣が局在することが多いときには膀胱麻痺は起こりにくいという通説も無関係ではないと思います.
しかし,私は,脳卒中後遺症患者にも神経因性膀胱の存在は決して稀でないと考えています.確かに,脳卒中後遺症患者の場合には,前述のような精神障害・器質的障害・種々の合併症の存在などの諸因子が複雑に関与しているために,神経因性膀胱の診断は必ずしも容易ではなく,十分に慎重でなければならないと思います.
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