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はじめに
本稿では,従来の身体障害,知的障害,精神障害の3つの障害領域における福祉サービスの対象となりにくかった発達障害に焦点をあてて,福祉的就労における発達障害者の現状と課題,並びに今後の展望について論じる.特に,発達障害による障害特性を踏まえつつ,福祉的就労の場面ではどのような支援の視点が必要なのかを明らかにしたい.
ここでは,発達障害者を発達障害者支援法(2005年)の定義に則して「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者」として捉えることにする.すなわち,脳性麻痺や知的障害など発達期に発生する広義の発達障害ではなく,同法の対象となる発達障害とする.
発達障害については,近年,教育,福祉,雇用など障害者の生活にかかわるさまざまな分野でその課題が認識されてきており,前述の発達障害者支援法が制定される背景となってきた.知的障害を伴う場合には,療育手帳制度をはじめとした同障害に対するサービスの活用が可能であり,また,最近では精神障害者保健福祉手帳の交付を受ける発達障害者も増加しつつあるが,本人や家族が障害の認識をもたない場合や,生活上の課題を抱えながらも福祉サービス利用のための適切な相談に結びつかない場合などもある.また,支援制度の未整備ともあいまって,発達障害は支援が行き届かないことが指摘されてきた障害である.なお,主な発達障害の特徴は,表に示すとおりである.
ところで,2010年の障害者自立支援法の改正によって,発達障害が同法の対象となることが明記された.具体的には,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する精神障害者〔発達障害者支援法(平成16年法律第167号)第2条第2項に規定する発達障害者を含み,知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く.以下「精神障害者」という.〕のうち18歳以上である者をいう」(下線は筆者)と規定されたことを指す.これによって今後も,身体障害,知的障害,精神障害といった障害者としての認定を前提にするものの,従来の発達障害を重複する者に加え,発達障害単独の場合の同法に基づく福祉サービスの利用がさらに促進するものと思われる.
なお,一般就労に関連するが,障害者の雇用の促進等に関する法律においては,発達障害者は同法に規定される職業リハビリテーションの対象とされている.同法第47条の「身体障害者,知的障害者及び精神障害者以外の障害者に関する特例」により発達障害者は厚生労働省令に定める者として位置づけられ,発達障害であることの確認は,原則として都道府県障害福祉主管課,精神保健福祉センターまたは発達障害者支援センターが紹介する「発達障害に関する専門医」による診断書によるものとされている.
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