書評
独立行政法人労働者健康福祉機構全国脊髄損傷データベース研究会(編)「脊髄損傷の治療から社会復帰まで―全国脊髄損傷データベースの分析から」
佐伯 覚
1
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
pp.433
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102060
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は,過去十数年にわたる3,000例を超える脊髄損傷例の分析結果をまとめたものである.年間の登録症例数は,わが国で新規発生する脊髄損傷者の数パーセントに相当する.現在の脊髄損傷急性期治療に始まり,社会あるいは学業復帰,さらには最近の脊髄損傷発生時年齢のピークが高齢に移行している現状を踏まえた解析など,脊髄損傷医療を網羅する情報が述べられている.
本書にあるデータベース(DB)は,1994年,住田幹男氏(前関西労災病院リハビリテーション科部長)らが中心となり,全国23労災病院,総合せき損センターおよび吉備高原医療リハビリテーションセンターの脊髄損傷者のデータを収集し,DB化したことに始まる.国際的には大規模な脊髄損傷DBがあるのに,わが国では全国規模のDBがなかったことがその開発の契機になっている.労災病院グループでこのようなDBが構築された背景には,1954年より本多純男氏(元関東労災病院リハビリテーション科部長)らが,労災病院を中心に脊髄損傷者の死因に関する調査・集計を継続的に行っていたことがある.50年前に本DB構築に当たっての下地ができていたのである.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.