連載 印象に残ったリハビリテーション事例
脳性麻痺訓練治療のあり方を教えてくれた子どもたち
朝貝 芳美
1
1信濃医療福祉センター
キーワード:
脳性麻痺
,
訓練治療のあり方
,
運動機能予後予測
,
長期経過
Keyword:
脳性麻痺
,
訓練治療のあり方
,
運動機能予後予測
,
長期経過
pp.399-401
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102045
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歩行機能向上のための訓練治療のあり方を教えてくれた例
1.痙直型脳性麻痺児に対する集中訓練は禁忌?
約30年前,就学前の痙直型脳性麻痺児を連れてある母親が外来を受診した.母親の希望は「訓練治療をして杖歩行で移動できるようになり,普通学校へ通学させたい」というものだった.脳性麻痺について経験の浅かった私は,訓練士の意見を聞いてみた.訓練士の意見は,現在,保育園に通っているのなら,「訓練,訓練」と言わずに健常児との生活のなかで社会性を身につけたほうがよいという意見であった.当時,痙直型脳性麻痺児に対する集中訓練は禁忌で,無理に歩かせれば変形拘縮が増悪し,機能が低下してしまうという考えが一般的であった.肢体不自由児施設への入所は長期にわたることが多く,「入所生活は閉鎖的であるため,軽度~中等度例では地域生活で社会性を身につけるほうがよい,重症例は訓練治療しても改善は望めないので入所の対象ではない,特に自分で食事のできない子どもは受け入れられない」というものであった.一方,学校の考え方は,障害があれば専門の施設で訓練治療を受ける必要があり,普通学校では受け入れられないというもので,当時は子どもの数も多く,学校では障害児までを扱うことはできない状況であった.
しかし,半年以上経って母親が外来に来た際,子どもが大阪の療育施設に入所して集中訓練を受けたところ,杖歩行が可能となり,地元の普通学校に通学していると話してくれた.この例は私に機能予後予測に基づいた集中訓練の重要性を教えてくれた忘れられない症例となった.
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