特集 アルコール中毒
首都圏一般人口における「大量飲酒者」と「問題飲酒者」
斎藤 学
1
1国立療養所久里浜病院・成人科
pp.309-317
発行日 1978年5月15日
Published Date 1978/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205605
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はじめに
アルコールが関与する諸問題(飲酒問題)のうち医療の対象となる部分がアルコール症(alcoholism)であるが,その限界を定める作業は,「医療」という概念の暖昧さもあって,なかなか厄介であり異論も多い8).アルコール症はほとんど飲酒問題全体をさすほどに拡張した意味を持って使われることもあるし,伝統的な「慢性アルコール中毒」,「アルコール性精神病」の用語のもとに極く狭い一部の症例のみをさして用いられることもあり,こうした概念上の混乱がいまだに続いている.したがって,この問題の疫学的,社会学的調査にたずさわってきた研究者たちは,従来これを単一の疾患単位として取り扱うことを避け,「大量飲酒者」や「問題飲酒者」(逸脱飲酒者,アルコール乱用者)を彼らの観察対象としてきたのであるが,これらと「アルコール症者」という"病人"との異同については,今までのところ,十分な吟味がなされているとはいい難いようである.
飲酒人口中の大量飲酒者の割合を推定する方式は,Ledermann4),de Lint1)らによって工夫され,額田6)7)はこれを日本の飲酒人口に適用して,"純アルコール150ml/day=清酒5.2合/day"以上の超大量飲酒者の実数を150万人前後と推定している.
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