Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「告白」―特別支援的観点をもたない教師が作り出した悲劇
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.895
発行日 2010年9月10日
Published Date 2010/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101860
- 有料閲覧
- 文献概要
十年を一昔というなら,二昔以上も前のことである.札幌に仕事で訪れていた高畑勲監督と居酒屋で語り合う機会を得た.私は,「火垂るの墓」のサクマドロップのシーンは涙なしには見ることができなかったこと,反戦・平和を訴える秀作であることなど感想を一通り述べたのだが,監督は,冗談じゃない,あれは都会育ちの兄妹が,田舎でのサバイバル術を知らないために死んだという物語であり,反戦・平和とは無関係だと,わざとらしい口調で切り返してくる.その前年,宮崎駿監督から,高畑は何を言っても,まずは批判と否定から始まる,と聞かされていたので,なるほど,こんなリアクションになるのかと大いに納得したものだ.
さて,今日の日本映画のレベルの高さを証明する「告白」(監督/中島哲也).ガヤガヤした教室の空気が微妙に変化していく冒頭の描写に脱帽.そして,本作を高畑流に切ると,反社会的ミステリーでもバッドエンド・エンターテイメントでもなく,教育実践に失敗した教師が,最後まで己の未熟さに気づけなかった物語,になるはずだ.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.