巻頭言
介護予防とリハビリテーション
大渕 修一
1
1東京都老人総合研究所
pp.813
発行日 2010年9月10日
Published Date 2010/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101844
- 有料閲覧
- 文献概要
リハビリテーションが一般に正しく理解されていないと感じるのは寂しい.急速な高齢化と少子化による社会保障費の枯渇から,医療に効率化が求められるようになり,リハビリテーション本来の意味が矮小化されて,リハビリテーション=機能訓練と捉えられているように感じられる.365日リハビリテーションは,その象徴であろう.リハビリテーションは決して機能訓練だけではなく,一つひとつの障害に立ち向かい,行きつ戻りつしながら,人や社会が成長していくプロセスで,むしろ非効率な試みが本質であることを,改めて社会に理解して欲しいと思う.
同じく,介護予防も,要介護高齢者を減らすために高齢者をトレーニングに追い立てるかのようにみられがちであるが,そうではない.心身機能が衰えて,社会から孤立しがちな高齢者をもう一度力づけて,再び社会の一員として復帰してもらうことが目的だ.一方は障害者で,一方は健常者と,対象の違いこそあれ,その根底にある理念は同じである.また,今の高齢者が置かれている状況は,過去に障害者が置かれていた状況とよく似ている.歳だからという言葉がよく聞かれるように,年齢を理由にした差別(エイジズム)が社会にあり,それが高齢者の“参加”を妨げている.これを払拭することも介護予防の目的の一つである.筆者の関連する介護予防の自主グループのなかには,認知症であっても介護予防のボランティアをしている人もいる.特定高齢者で介護予防事業に参加した人が,サポートする側になることもある.人それぞれ,足りないところと優れているところがあり,これを当たり前とする認識が必要だ.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.