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介護予防施策は,平成12年の介護保険制度成立時から,介護保険の生活支援サービスと,より自立支援を強調した施策として車の両輪として働くように設計されたものである.しかし,介護保険制度開始時においては,介護保険制度を運営する上での基本的なサービス基盤が整っておらず,より緊急度の高い訪問介護など在宅生活を支えるための支援サービスが重点的に整えられてきたために,介護予防施策が先延ばしにされてきた.その結果,介護保険制度は国民にとって必要不可欠な制度として成長したと同時に,一方で安易な生活支援サービスの利用が,かえって自立支援を阻害し,要介護状態の重度化を招いているのではないかという懸念も生じた.このような背景から平成17年の介護保険法改定においては,車の両輪として機能させるという原点に立ち戻り,自立支援をより明確にした,予防重視型システムへの転換が図られることになった.運動器疾患対策はその1つの手段である.
同時に,制度成立時には予想されなかった,脳血管疾患などの疾病による要介護状態ではなく,廃用を背景とし加齢に伴う生活機能障害によって要介護状態となっている者が,特に軽度要介護者で多いことがわかり,すでに生活機能障害が大きく生じている要介護高齢者へのサービスの提供にとどまらず,要介護状態になる前のリスクの高い地域の虚弱高齢者まで拡大する必要があると考えられた.これらのことから,平成17年の介護保険法の改定にあわせて,軽度者への廃用症候群を背景とする老年症候群を主な介入対象と明確にした上でこれを早期に発見する,健診システム,状態改善を促す介護予防サービス,それらをマネジメントする地域包括支援センターが整備されることとなった.
本稿では,この新しい介護予防施策が導入されてからの3年間の功罪を,運動器疾患対策(正しくは医療対象と区別する意味で,運動器の機能低下であるが)に視点を置いて論述したい.
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