特集2 これまでの10年とこれからの10年—理学療法の発展と課題と夢
介護予防としての理学療法
大渕 修一
1
Shuichi Obuchi
1
1東京都老人総合研究所在宅療養支援研究部
キーワード:
介護予防
,
予防学
,
社会医学
Keyword:
介護予防
,
予防学
,
社会医学
pp.55-57
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200446
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はじめに
私が本誌の第35巻に「理学療法研究におけるパラダイム転換」として,治療学としての理学療法学から予防学としての理学療法学へのパラダイム転換を寄稿してから1)14年が経つ.EBMを錦の御旗にマネジドケアを導入しようとする行政と欧米に比較してEBMが脆弱な後ろめたさを感じている臨床医学が共鳴して,障害受容過程を慮ることなしに,医療の急性期化,病院の機能分化,慢性医療の包括化が進められることへの警鐘を込めて書いた.その解決策として提案したのが,理学療法を一次予防,二次予防へ広げることのパラダイムシフトであった.折しもEBM華やかなりし頃に,理学療法にEBMを適応すると患者が治らないことが明らかになるだけだなどと書くわけであるから,へそ曲がりの謗りはもとよりの覚悟であった.
また,障害者に対象を限定している理学療法士及び作業療法士法も大きな妨げで,予防へのパラダイムシフトは理解できてもそれは理学療法かという根源的な問いに答えるものではなかった.それでも理学療法のなかで予防への関心は徐々に高まり,活動の実績が行政を動かし理学療法の名称使用範囲拡大の通知につながり,研究課題の増加を背景に日本予防理学療法学会が分科会として位置づけられるなど,パラダイムシフトが着実に進んできたことを感じさせる.そして50年を記念する本誌のテーマに選択されたことはさらに一般化されてきたことを示すのではないか.
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