Japanese
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特集 ゴール設定に必要な予後予測
外傷性脳損傷
Predicting outcome after traumatic brain injury.
石合 純夫
1
Sumio Ishiai
1
1札幌医科大学医学部リハビリテーション医学
1Department of Rehabilitation, School of Medicine, Sapporo Medical University
キーワード:
外傷性脳損傷
,
予後予測
,
復職
,
運転
Keyword:
外傷性脳損傷
,
予後予測
,
復職
,
運転
pp.623-629
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101804
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はじめに
「頭部外傷において,あきらめるしかないというほど重症なものもなければ,無視してよいというほど軽症のものもない」というヒポクラテスの格言がよく引用される1).これまで,治療方針決定のために,救急搬入時のGlasgow Coma Scale(GCS)2)などを予測因子とし,Glasgow Outcome Scale(GOS,表1)3)の帰結を予測する検討がしばしば行われてきた.
ところで,「予後」とは何であろうか.GOSで中等度障害または回復良好であれば,順調な回復と位置づけて予後の分析を行う場合が少なくない1).しかし,交通事故などによる外傷性脳損傷は,脳卒中と違い,就学,就労の年代に起こることも多い.すなわち,学校生活や職業生活に戻れるかが機能的予後として重要となる.また,予後について伝える時期の問題もある.受傷から早期の段階でも,「どのくらい早く正常な生活に戻れるのか」,「どのような治療やリハビリテーションが必要なのか」,そして,長期的な障害の可能性や程度に関する質問も受ける4).最悪の帰結の可能性を話すことは難しくないかもしれない.しかし,この段階で,受傷前の能力を勘案し,患者の社会的・家庭的役割を考慮して,長期的予後を予測することは非常に難しい.リハビリテーション科医としては,勤務する病院の性格にもよるが,回復過程のさまざまな段階で個々の患者の状況に応じた適切な対応ができるよう,予後に関する知識を身につけておく必要がある.
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