Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
リハビリテーション医療において,quality of life(QOL)は重要なキーワードであり,患者の機能や能力だけでなく,患者さらには家族の生活・人生といった視点に立ちアプローチがなされている.QOLという語は広く浸透してきており,QOLに言及している論文は年々増加傾向にある.とくに,欧米諸国ではQOLを注意深く定義し,QOLを測定する尺度を科学的に評価したうえで,疾患あるいは医療の帰結(アウトカム)として活用しようという動きが近年盛んになってきている.リハビリテーション領域に限らず,医療の究極的ゴールとして,総論では賛同を得ていると言える.しかし,その言葉を多くの人が使うようになればなるほどその曖昧さは拡充し,多義性,主観評価の定量化における信頼性と妥当性の問題などの理由で,医学界では懐疑の眼で見られていることも,また事実である1).
外傷性脳損傷(以下,脳外傷)に伴う後遺症は身体的障害のみに限らず,前頭葉・側頭葉損傷が主な原因である神経心理学的障害や,心理社会学的障害,情緒障害と多岐に亘る2).結果として,脳外傷者のQOLにはさまざまな後遺症が影響することが予想される.米国では,脳外傷モデルシステム(Traumatic Brain Injury Model System;TBIMS)を用いたQOL調査ならびにQOLに影響を与える因子解析3),また国立衛生研究所(Nation-al Institutes of Health;NIH)の助成のもと開催された合意形成委員会(consensus group)における勧告4)など,脳外傷とQOLに関して,多くの報告がなされている.本邦では,大橋の問題提起5,6)以後,脳外傷リハビリテーションへの本格的な取り組みが始まったばかりであり,脳外傷とQOLに関する報告は限られている7).
本稿では,米国の報告を中心に紹介し,また当院での調査,ならびに問題点について述べる.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.