連載 印象に残ったリハビリテーション事例
t-PA著効はリハビリテーション不要を意味するのか?―t-PAは著効したが,問題行動が絶えなかった症例
門馬 博
1
,
高橋 秀寿
2
,
岡島 康友
2
1杏林大学医学部付属病院リハビリテーション室
2杏林大学医学部リハビリテーション医学教室
キーワード:
t-PA
,
脳梗塞
,
認知症
,
高次脳機能障害
Keyword:
t-PA
,
脳梗塞
,
認知症
,
高次脳機能障害
pp.287-289
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101732
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アメリカでの認可に遅れること約10年,日本においても2005年より遺伝子組み換え型組織プラスミノゲンアクチベーター(recombinant tissue plasminogen activator;t-PA,もしくはrt-PA)が認可された.その影響は単なる1薬品の認可にとどまらず,保険点数の改定,病院における急性期脳梗塞診療体制の変化,救急隊によるプレホスピタルケアへの積極的な取り組みなど,さまざまな変化が起きたことは記憶に新しい.また,これらの変化はマスコミを通じて多くの国民の関心を集めることとなったが,一方で「t-PAという特効薬があれば脳梗塞は必ず治る」といった,行き過ぎた認識をもつ人も少なくない.
杏林大学医学部付属病院(以下,当院)は2006年5月に脳神経外科,神経内科,リハビリテーション科の3科を中心として,診療科の垣根を越えた脳卒中専任スタッフによる脳卒中センターを立ち上げた.発足後約4年が経ち,t-PA療法の施行数は2009年10月末現在142件を数える.しかし,すべての患者が問題なく退院できたわけではない.われわれはt-PAそのものの効果にばらつきがあることはもちろん,t-PAの著効が必ずしも「問題なし」ではないという症例を多く経験した.本稿では,その代表的な症例について記す.
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