Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「余命1ヶ月の花嫁」―人を好きになるというのは,その人の生き方を好きになるということ
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.781
発行日 2009年8月10日
Published Date 2009/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101580
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「余命1ヶ月の花嫁」(監督/廣木隆一).テーマがそのままタイトルになり,タイトルがすべてを物語る.早い話,興がそがれる.あえてお金と時間を使って見に行く作品ではないと判断されてもやむを得ない.テレビのドキュメンタリー番組に端を発した同名タイトルの書物が広く感動を呼んでいるとしても,私がそうであったように誰もが知っているというものではない.ただし,私のような映画愛好家は,廣木隆一作品を外さない.
実際,本作は,繊細さにおいて日本映画の一つの到達を示している.なんと言っても日本語の使い方がうまい.セリフの間合い,眼差し,ちょっとした間投詞などで,言葉にしがたい思いが香り立つ.そのうえで凝固した言葉が発せられる.あえて言わせてもらうなら,本作全体が一篇の詩,呼吸する生命体になっている.小津作品や昭和残侠伝シリーズが追究した様式美の世界と重なる.泣かせることをねらって,ここぞとばかり音楽を高鳴らせるといったよくある安直な手も使わない.状況を客観視する姿勢を終始崩さない.
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